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外国人エンジニアと働くための日本語ガイド|あなたの指示が伝わる書き方

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この記事を読むべき人

この記事は概念解説ではなく、書き換えテンプレートと運用ルール の集合です。冒頭から読まずに、自分の悩みに近いセクションから読んでください。


なぜ「自分の日本語」を見直す必要があるのか

外国人エンジニアの日本語学習は、教科書から離れた瞬間に「あなたの書き方」が教材になります。あなたがPRコメントで「させていただきます」を多用すれば、相手はそれを標準語と思い込みます。あなたが朝会で「ちょっと厳しい」と言えば、相手は否定なのか時間の問題なのか判断できません。日本人側の言語選択は、相手の語彙化と意思決定の両方を支配します。 これがチームのアウトプットに直接効く理由です。


外国人エンジニアが日本語でぶつかる6つの壁

仕事の場面ごとに、外国人エンジニアが「分かったふり」をしがちなポイントが違います。よくぶつかる壁を把握しておくと、書き方を変える価値が見えます。

朝会 — 速さと省略

朝会は5〜10分で全員回す形式が多く、ネイティブの省略・短縮が大量に飛び交います。「あれ、まだ?」「例の件、どうなった?」のような指示語+省略表現は、外国人エンジニアにとって最も解析コストが高い言い回しです。

PRレビュー — 含みのある敬語

「ちょっと気になります」「もう少し検討してもらえたら」など、日本語のレビューコメントは断定を避ける含みのある表現が多用されます。外国人エンジニアは「気になる=直すべき」なのか「直さなくてもいい」のかが判断できません。

スプリントプランニング — 曖昧な「対応します」

工数見積りや優先度の議論で「対応します」「やってみます」「検討します」が判断主体・期限なしで使われると、外国人エンジニアは「自分が担当者なのか」「今スプリントなのか」が掴めません。

デモ・振り返り — 婉曲表現の壁

「もう少し早く動くといいですね」「ここはちょっと改善の余地があるかも」は、日本人同士なら「次の改善ターゲット」と理解できますが、外国人エンジニアは「肯定的なフィードバック」と受け取ることがあります。

クライアントMTG — 重層敬語

社外向けの「ご検討いただけますと幸甚に存じます」「させていただきたく存じます」は、N2でも一度で理解できないことが多い表現です。クライアントMTGの議事録を外国人エンジニアが読むときに最も解析が遅れる箇所です。

Slack — 既読プレッシャーと絵文字

スレッドの暗黙の宛先(誰が答えるべきか)、リアクション絵文字の意味、メンションなしの「ご確認ください」など、Slackには文化的に学習しないと分からないシグナルが多くあります。


「伝わる日本語」3原則 — 短く・主語明示・選択肢提示

外国人エンジニアと働くときに、敬語を捨てる必要はありません。構造を単純化して敬意は保つ という考え方が基本です。3つの原則だけ覚えれば、ほとんどのケースで誤解が減ります。

原則何をするかなぜ効くか
① 短く一文40字以内、修飾の入れ子は2段まで翻訳ツール経由でも構造が崩れにくい
② 主語明示「私が」「Aさんが」「クライアントが」を省略しないゼロ代名詞は日本語学習者の最大の壁
③ 選択肢提示「A か B どちらにしますか?」の形式で問うYES/NO や開いた質問より判断負荷が低い

悪い例: 「あの件、もう少し検討してもらえると」
良い例: 「設計案AとB、PRレビュー前にどちらを採用するか、明日までに私にSlack DMで教えてください」

主語・期限・チャネル・選択肢が全部入っているのが「伝わる日本語」です。


シーン別「やさしい日本語」言い換え集

6つのエンジニア儀式ごとに、A(敬語)/B(丁寧)/C(くだけた)の3段階で言い換えを置きました。外国人エンジニア相手では基本Bで揃える、社外が混ざるときだけA が運用ルールです。

PRコメント — 「LGTM」と「要修正」の伝え分け

目的A(敬語・社外混在)B(基本形・推奨)C(くだけた・親しい同僚)
承認確認いたしました、問題ございません確認しました、OK ですLGTM/OK
軽い指摘一点、ご検討いただきたい箇所がございますここ、X の方法も検討してみてくださいここ、X のほうがいいかも
ブロック申し訳ございませんが、X の修正をお願いいたしますすみません、X を直していただけますかX 直してください
質問こちらの意図を教えていただけますでしょうかここ、どういう意図ですか?ここ、なんで?

外国人エンジニア向けの注意: B列の「ここ、Xの方法も検討してみてください」は、日本人同士なら「指摘=直す方向」と読みますが、外国人エンジニアには「任意の提案」に見えます。修正必須なら「直してください」、任意提案なら「(任意)Xも検討の余地」と明示 すると判断が揃います。

朝会 — 進捗・ブロッカーの聞き方

目的AB(基本形・推奨)C
進捗を聞く昨日の進捗をお聞かせいただけますか昨日の進捗、教えてください昨日どうだった?
ブロッカーを聞く何かお困りの点はございますかブロッカーありますか?ハマってる?
助けを申し出るお手伝いできることがございましたらお申し付けください手伝えることあれば言ってください手伝うよ
時間切れを伝える恐れ入りますが、続きは別途お時間をいただけますでしょうかすみません、続きはあとで個別にお願いします続きあとで!

外国人エンジニア向けの注意: 「ブロッカーありますか?」と聞いて「特にないです」と返ってきても、本当にブロッカーがないとは限りません。N3〜N4の相手は「ブロッカー」の閾値が不明確で、「自分の力で解決すべき問題」と「チームに助けを求めるべき問題」の境界が引けないことがあります。初回は「困っていなくても、相談したいことがあれば言ってください」を併用 すると引き出せます。

スプリントプランニング — 工数感の言語化

目的AB(基本形・推奨)C
担当の確認X のチケット、どなたがご担当でしょうかX のチケット、誰が担当しますか?X 誰やる?
工数の質問X の見積もりについて、もう少し詳しくお聞かせくださいX の見積もり、もう少し詳しく教えてくださいX どのくらい?
異論の提示別の見方として、Y の可能性もあるかと思いますY の可能性もあると思いますY もあるかも
期限の確認こちら、いつまでにご対応いただけますでしょうかこれ、いつまでに対応できますか?これいつまで?

外国人エンジニア向けの注意: 「対応します」「やってみます」「検討します」の3つは、日本語学習者にとって判断主体と期限が省略された曖昧表現 に見えます。「私が来週月曜までに対応します」のように、主語+期限+動詞 をワンセットで書く運用にすると、見積もり議論が安定します。

デモ・振り返り — フィードバックを誤解されない書き方

目的AB(基本形・推奨)C
肯定的なフィードバック大変素晴らしい実装だと思いますこれは良い実装です/助かりますこれいいね!
改善ポイントの指摘一点、改善の余地があるかと存じます一点、改善できる箇所がありますここ直したほうがいい
質問・確認念のため確認させていただきたいのですが念のため確認ですが念のため確認
議題の保留こちらは別途お時間をいただいてもよろしいでしょうかこれは別途時間取りましょうか?これ別で話そう

外国人エンジニア向けの注意: 「改善の余地があるかも」「もう少し早く動くといい」など婉曲表現は、外国人エンジニアには肯定的フィードバック に見えがちです。「これは次のスプリントで改善したい点です(=ネガティブ)」「これは今後も続けたい点です(=ポジティブ)」と評価軸を明示 すると、振り返りの精度が上がります。

クライアントMTG — 敬語の階段を1段下げる

クライアント前では原則Aですが、議事録を外国人エンジニアに展開する場合は、議事録だけB化 の運用が有効です。

場面A(クライアント前で使う)B(議事録・社内共有用)
提案の導入ご提案させていただきたく存じますご提案します
確認依頼ご確認いただけますと幸甚ですご確認ください
期限の表明来週末までにご対応いただけますと幸いです来週末までにお願いします
結びの挨拶引き続き何卒よろしくお願い申し上げますよろしくお願いします

外国人エンジニア向けの注意: 「ご検討いただけますと幸甚に存じます」のような重層敬語は、N2でも一度で理解できないことが多いです。社内共有用には1段下げたB版議事録 を別途用意するか、クライアントメールの原文をSlackに転記する際に意訳を併記 する運用が現実的です。

Slack — 非同期向けの定型句

目的AB(基本形・推奨)C
メンション込みで依頼@X さん、お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認をお願いいたします@X さん、確認お願いします@X 確認お願い
緊急の声がけ@X さん、申し訳ございません、緊急でご相談したい件がございます@X さん、緊急で相談したいです@X 緊急、相談したい
お礼ご対応誠にありがとうございました対応ありがとうございます!ありがとう!
不在の周知本日午後、所用にて離席いたします今日午後、外出します午後外出!

外国人エンジニア向けの注意: Slackのスレッド宛先は、メンションがないと外国人エンジニアにとって暗黙の判断になります。「誰宛か」と「いつまでに」を必ずメンションと文中で二重表記 すると、既読プレッシャーや返信遅れを防げます。


「読みやすい日本語」の書き方ルール7つ

ルールベースで運用できる「やさしい日本語」を、エンジニア現場向けに7つに絞りました。SlackのテンプレートやNotionのガイドラインに直接取り込めます。

ルール何をするか
1. 一文40字以内句点で必ず切る「Aを実装し、Bをレビューし、CをデプロイしてDに連絡してください」→ 4文に分割
2. 主語を必ず書く「私が」「Aさんが」を省略しない「対応します」→「私が対応します」
3. 期限を数値で書く「なるはや」「早めに」を避ける「明日18時までに」
4. 二重敬語を避ける1動詞1敬語「お送りさせていただきます」→「お送りします」
5. ゼロ代名詞を減らす指示語「あれ」「それ」を固有名詞に「あの件」→「PR #123 の件」
6. 婉曲を結論にしない「〜かもしれません」を判断結論として使わない「直したほうがいいかも」→「直してください/(任意)直すと良い」
7. 受け身を能動に「〜されている」を「〜が〜している」に「Aさんに依頼されている」→「Aさんが私に依頼している」

運用のコツ: このルールをNotionのチーム規約に置き、新メンバーのオンボーディング初日に読んでもらう。日本人側にも外国人側にも同じ基準が示されるので、レビューで指摘しやすくなります。


JLPTレベル別「相手の日本語力で書き方を変える」目安

外国人エンジニアのJLPTレベルが分かっている場合、書き方を1段ずつ調整します。

相手のレベル何を変えるか残してよいもの
N5〜N4漢字に振り仮名、敬語は丁寧語のみ、一文30字以内簡単なテック片仮名(タスク・PR・デプロイ)
N3二重敬語を避ける、婉曲表現を結論として使わない、主語明示通常の丁寧語、技術用語の漢字
N2重層敬語(させていただく + ご + 〜られる)を1段下げる、ゼロ代名詞を減らす一般的なビジネス敬語、慣用表現
N1通常通りで OK、ただし業界スラング・社内固有の略語は補足ほぼすべての日本語表現

レベルが分からないとき: 相手のSlack投稿を1週間観察し、書ける語彙の量と漢字の使用率 で大体推定できます。N3以下なら漢字が少なめ・短文中心。N2以上なら長文・複雑な複合語が出てきます。


日本人側がやりがちな5つの落とし穴

外国人エンジニアと働くときに、日本人側が無意識にやりがちな5つのパターンです。keigo-mistakes の裏返し版として読めます。

1. 「了解です」を全員に同じ調子で送ってしまう

外国人エンジニアは「了解」と「承知」の区別を学習中です。あなたが上位者として「了解です」を送ると、相手は「上司への返答も了解で良い」と学習してしまいます。社外混在のSlackでは「承知しました」、社内ピアには「OKです」「確認しました」 で揃えると言葉遣いの教材が一貫します。詳しくは keigo-mistakes を参照。

2. 「確認お願いします」だけで送る(粒度なし)

「確認お願いします」だけのメッセージは、外国人エンジニアにとって何をどこまでチェックすべきか不明 な指示です。「PR #123の auth.go の追加テスト部分を、明日18時までにレビューお願いします」のように、対象・範囲・期限の3点を必ず添える とアウトプットが安定します。

3. 「ちょっと厳しい」を否定の意味で使う

「今スプリントでこれは、ちょっと厳しいかな」を否定として使うのは日本人同士の慣習です。外国人エンジニアは「時間がタイトだが頑張れる」と受け取ることがあります。「今スプリントでは対応できません。次スプリントに延期しましょう」と明示 すれば、見積もり議論で齟齬が出ません。

4. 片仮名外来語の独自略を使う

「プルリク」「レビュアー」「マージコミット」のように、日本のテック現場で広まっている独自略は、N3以下の外国人エンジニアにとって解析できないことがあります。Notionの用語集に「Pull Request → プルリク、PR」など対応表 を1枚置くと、新メンバーのオンボーディングが速くなります。

5. 婉曲を入れすぎて結論が消える

「もう少し検討してもらえたら、と思うのですが、もちろん難しければ無理にとは言わないんですけど」のような重層婉曲は、結論が消えます。外国人エンジニア相手では「検討してください」または「検討しなくてOK」のどちらかを明示 すると、判断負荷が下がります。


片仮名テック語のアクセント — 外国人が混乱しやすい10語

片仮名は意味の理解は楽でも、アクセントは英語と日本語で違うことが多く、外国人エンジニアが頻繁に矯正される箇所です。あなたが普段使うアクセントが、相手の聞き取りの基準になります。

単語アクセント型外国人エンジニアがやりがちな誤発音
タスク頭高(タ\スク)英語のフラット発音
コミット平板(コミット_)英語の「カミット」風
デプロイ平板(デプロイ_)「プロイ」を強く言う
マージ頭高(マ\ージ)英語「merge」の引き伸ばし
バグ頭高(バ\グ)英語「bug」風の上昇調
サーバー頭高(サ\ーバー)英語の「サ」強勢
クライアント中高(クライ\アント)英語の「クラ」強勢
リソース中高(リソ\ース)平板または英語強勢
リリース中高(リリ\ース)長音を短くする
プロダクト中高(プロ\ダクト)英語の「PRO」強勢

運用のヒント: 朝会で外国人エンジニアがこれらの単語を使ったとき、あなたが標準アクセントで反復 すると、相手は無意識に修正されていきます。明示的に「アクセントが違う」と指摘するより、自然な反復のほうが学習効率は高いです。


チームの日本語環境を整える — Slack・Notion・議事録のテンプレ化

ガイドラインだけ作っても運用されなければ意味がありません。3つの場所だけテンプレ化 すれば、外国人エンジニアのチーム参加コストは大きく下がります。

Slackのチャンネル運用

Notionのドキュメント運用

議事録のテンプレ運用


よくある質問

外国人エンジニアと働くとき、日本語をどこまで簡単にすべき?

相手のJLPTレベルと、伝達の重要度で2軸判断します。N5〜N4の相手には主語明示・一文40字以内・敬語1段下げを徹底。N3以上なら通常の丁寧語でOKですが、PRコメントや障害対応など「意思決定にかかわる場面」では、レベルに関係なく短く・主語明示・選択肢提示の3原則を守ると誤解が減ります。

Slackで「了解です」と返すのは外国人相手だと失礼?

失礼ではありませんが、外国人エンジニアは「了解です」と「承知しました」の区別を学習中の段階のことが多いです。あなたが立場上の上位者の場合「了解」は同列・下位への返答に見えるため、相手が混乱します。「承知しました」または「OKです」「確認しました」のほうが言葉遣いの判断負荷を下げられます。

片仮名のテック用語は外国人エンジニアにとって楽?

意味の理解は楽ですが、アクセントは別問題です。「タスク」「コミット」「サーバー」「クライアント」など、英語と日本語でアクセントの型が違う単語は、外国人エンジニアが頻繁に矯正される箇所です。あなたが普段使うアクセントが、相手の聞き取りの基準になります。

「やさしい日本語」と敬語の関係は?

「やさしい日本語」は敬語を捨てる運動ではなく、構造を単純にして敬意は保つという考え方です。一文40字以内・主語明示・受身を能動に変換・二重敬語を避けるなどのルールを守れば、丁寧語ベースで十分通じます。重層敬語(させていただく + ご + 〜られる)は外国人にとって解析コストが高いので、社内では丁寧語1段で揃えるのが効率的です。

外国人エンジニアに業務指示を出すとき、口頭と書面どちらがいい?

決定事項は書面、ニュアンスは口頭が原則です。仕様変更・期限・優先度などの判断材料はSlackかNotionに必ず残し、リアルタイムの相談(設計の方向性、トレードオフの議論)は口頭で。書面に残った情報は相手が翻訳ツールで何度でも読み返せますが、口頭の情報は消えてしまうため、重要度に応じて使い分けます。


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Essential 30 PDFを渡す

外国人エンジニアのオンボーディング初日に渡せる 「シーン別30フレーズ × 3レベル」のPDF を無料配布しています。Essential 30を取得 して、Slackで共有してください。コピペで使える形式なので、相手が翻訳ツールにかけても言葉遣いが崩れません。

新メンバーが入った1週間目に渡す「公式の参考資料」として運用すると、その後のレビュー指摘や朝会の言い回しが揃ってきます。


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